鈍感過ぎる彼女の恋は。《完》
彼女が入って来た瞬間、また変な流れになるだろう予測は容易に出来た。

黒目がちな大きな目に、通った鼻、口紅もしてないのに色付いた唇。スカートから伸びた細く長い脚はこいつらの格好の餌食になるだろう、と。

案の定変態オヤジはセクハラ発言を連呼。

げんなりしたその時、それは起こった。

彼女は俯くわけでもなく、合わせるわけでもなく、苦笑いするわけでもなかった。


歴史あるこの会社がそんな面接をする事が残念だ、と。
このまま続けるなら商品を買わないしSNSで拡散する、とまで言ってのけた。


言われた面接官はポカンとしたまま何も言えない。


もう虜だった。

こんな場で堂々と物怖じせず間違った事を間違っていると言える彼女に。

凛とした佇まい、意志の強い目。

今まで淡々と仕事をしていた俺には彼女は眩しすぎて、だけど同時に俺もやってやろうと言う気になった。

そして、彼女を手に入れたいとも。


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