【短】ぜんぶ、夏のせい
なんだか、騙されているような気になった。
癖で何気なく触れた唇に未だに残る熱を感じた途端、頭が猛烈にズキズキと痛んだ。
「痛…っ」
「大丈夫か!」
「……うっ」
慌てた声が頭上から聞こえて、私は体の力が抜けたのを感じた。
すかさず彼の腕が私の体を支えて、ゆっくりとベッドに横たわらせてくれた。
「大丈夫か」
「ありがとう、ございます」
「万全じゃないときは無理するなっていつも言って……これも覚えてないか」
「ごめんなさい」
はあ、とため息をつく彼。
白い白衣には、ほこり1つ見えず清潔なものだと思える。
それに加えて、端正な顔立ちだ。
だからこそ、ため息をついても嫌味がなくただの綺麗なワンシーンに見える。
「忘れてるなら思い出させてやる」
意識を飛ばしそうになっている私に向かって、彼はそう言ってのけた。