【短】ぜんぶ、夏のせい




本当に彼のことを知っていて、忘れたのだとしたら、何か彼との間に問題があったのだろう。


だったら、無理に思い出す必要はない。




「本当に違いますから」


「まあ、そう言うよな」


「は?」


「ん?」



だって、に続く言葉を、彼はどうやら知っているらしい。


何もかもわかっていると言いたげな顔が、無性にむかついた。



この人と話していると何だか面倒なことになりそう。


そもそも、この人と話している時間、もったいないよね?




「私、帰ります」


「ダメ」


「どうしてですか」


「退院許可おりてないから、しばらくここで泊まるんだ」


「えっ、てことは入院していると? なんで?」


「それは……えーっと」



なぜか言葉を詰まらせた彼に私は首をかしげる。


なんで詰まった…?




「何ですか」


「体、痛くない?」


「ところどころ痛いです」


「うん」




頷いた彼は少し傷ついた風だ。




< 6 / 18 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop