【短】ぜんぶ、夏のせい
「–––––おはよう」
窓の外を見ると、真っ暗だった。
あんなにジリジリとしていたお日様は、涼しげなお月様に隠れてしまっている。
「こんばんは」
「つれないな、挨拶くらい同じように返してくれても良くね?」
「外見てください。夜ですよ」
いつの間に来ていたのか、朝会った彼がベッドの淵に座っていた。
ちらりと時計を見ると、時刻は日にちをまたいで3を指していた。
「いつからここに?」
「2時間前かな」
「2時間何してたんですか」
「ずっとおまえの可愛い寝顔を見てた」
「うげ」
思わず感情がこぼれ落ちるように綺麗じゃない声が出てしまった。
「こら」
「ごめんなさい」
「思い出したら許してやる」
「いや無理……」
「無理じゃない」
彼はまた私に触れてこようと手を伸ばした。
咄嗟にその手から逃れようと意識した。