溺愛ペット契約~御曹司の甘いしつけ~
「風邪? 熱はかった?」
『んーん、熱はない。でも、まれが帰ってこないと死にそう。なんかめまいするし』
「わ、わかった。すぐ帰るから!」
理一は色白で痩せてて、低血圧なのか早起きが苦手で偏食もすごいから食も細くて、体調を崩しやすいから心配だ。
忙しく電話を切ると、私はパッと甲斐の方を向き必死に頼み込む。
「お願い、私を家に帰して! 彼氏の具合が悪いみたいで、心配なの」
甲斐は黙って私をじっと見つめ、それから何か考えるように一度瞳を伏せた。けれどそれは一瞬で、再び視線を上げて短く問う。
「家はどこだ」
「しっ。下北沢!」
「わかった。そんな慌てるな、ちゃんと帰してやるから」
意外にもすんなりと私の願いを聞き入れた甲斐は、タクシーの運転手さんに行き先の変更を伝えてくれた。
家に帰れることが決まると急に肩の力が抜け、シートに深く座り直して溜息をつく。
そんな私を一瞥した甲斐が、呆れたように言う。
「まるで忠犬だな」
「それの何が悪いんですか。誰だって恋人の体調悪かったら心配するでしょ!」
「まあな。お前の心境はわからないでもないが……問題はお前の相手だ。テメェの不甲斐なさのせいで彼女が夜も必死に働いてるってのに、その仕事中に電話して“帰ってこい”とは自分勝手極まりないと思わないか?」