溺愛ペット契約~御曹司の甘いしつけ~
すると最初は私と目を合わせていた甲斐がふい~、と目を泳がせ、あさっての方を向く。
そしていつもの自信ありげな顔とは違い、困ったような苛立ったような、微妙な表情でぼそっと呟いた。
「……馬鹿。ンなの、できるわけねえだろ」
……絶対、照れてる。予想以上に効果あったみたい。
だけど、そんなあからさまに耳まで真っ赤にされると、なんかこっちまで恥ずかしくなってくるんですけど。
私は笑顔を取り繕い、軽くからかってみる。
「い、いつもの勢いはどこいっちゃったの? ほら、今朝なんかぜんぜん平気な顔でハダカで抱きついてきたりしたじゃん?」
「……俺のハダカと、お前のハダカは違うだろ」
甲斐は冷静にそう指摘すると、不自然なほど明るいテンションで笑う私にジロリと冷たい視線を向けた。
な、なんか、怒らせちゃったみたい……。
「そ……そ、か、うん。そう、だよね」
「わかったら、さっさと部屋入るぞ」
不機嫌そうなご主人様は、手に握っていたキーで車をロックすると、私を置いてスタスタ歩き出してしまった。
……うう。仕返しのつもりが、結局は私が叱られて終わりになっちゃった。
ワガママ言ってもいいんじゃなかったっけ? ……って、まぁ、限度もある、か。
それにしても私たち、なんかどんどん変な関係になってきてる気がする。
甲斐のことは、嫌いじゃないけど……一緒にいると、嵐が来たかのように、心をかき乱される。
いったいこんな生活、いつまで続くんだろう……。