溺愛ペット契約~御曹司の甘いしつけ~
そんなことを思いながら指摘されたミステリー小説を恋愛小説の棚から抜き出す。そのとき、ふと隣にあった本が目に入った。
なんか、これだけ妙にボロボロじゃない……?
ちょっと気になるその一冊も一緒に棚から出し、手に取ってまじまじと観察した。
「幸福の、雪姫……」
タイトルを呟くように読みあげ、表紙を眺めた。
夜空を思わせる群青の背景に白い雪のような光が舞う、幻想的で美しいデザイン。けれどカバーは色あせたり、端が破れかかっていたりもしていて、年季が入っている。
「ねえ、どうしてこれだけこんなにボロボロなの?」
少し離れた棚の前に立っていた甲斐はこちらに近づいてきて、私の手元を覗いた。
「ああ、それか。……もう何千回と読んだからな」
「なんぜん……? 同じ話を、何度も?」
「いい話ってのは、何度読んでもいいんだよ」
「ふうん……」
ってことは、これは甲斐のお気に入りの物語ってことか。
それにしても、何千回と読むっていう心境はよくわからない。私は本は読まないけど、たとえばお気に入りの映画だって、三回も見れば飽きてしまう。