溺愛ペット契約~御曹司の甘いしつけ~
「ここは俺一人でやるから、リビングか寝室でさっそく読んできたらどうだ?」
私は未だ片付かない部屋をきょろきょろ見回してから、不安げに尋ねる。
「もしかして……私、邪魔だった?」
私じゃ本のジャンルも間違うし、今みたいに話しかけて作業を中断させちゃうから、ここにいると蔵書整理がはかどらないのかも……。
「誰がそんなことを言った。ただ読書を勧めただけなのに考えすぎだ。俺のそばにいたいのならいればいい。構って欲しいなら、こんなこと中断していくらでも構ってやる」
呆れた声だけど、瞳は優しかった。どうやら私の落ち込みを察してフォローしてくれたみたいだ。
そばにいたいのならいればいい、だなんて……そんな甘い声で言わないでよ。
それに、別に構って欲しいだなんて思ってない。
「そ、それならいいの。じゃ、リビングで読んでこよっかな~」
あまり甲斐を直視しないようにして、くるっと体の向きを変える。そしてロボットのようにぎこちなく歩き出してすぐ、甲斐の焦ったような声が飛んできて。
「おい、稀華、そこ足元――」
「え? わわっ」
床に積まれた本に気づかずつまずいた私は、バランスを崩した拍子にさらに別の本を踏んづけてツルっと滑り、前のめりに体が倒れていく。