溺愛ペット契約~御曹司の甘いしつけ~
わーん、なんでこんなトラップだらけなのよ……! って、私がドジなだけか……。
転ぶ前の刹那、そんなことを思いながら痛みに備えてぎゅっと目を閉じる。
だけど、待っていたのは痛みじゃなく、私を受け止める強い腕の感触。
「……ぶね。お前、どこ見て歩いて……」
ふう、と息をついて言いかけた甲斐と、それから私も、同時に無言になり同じ場所に注目していた。
片腕で斜め後ろから私を支えている甲斐の手が、がしっと握っているのが……完全に、私のバストだったからだ。
甲斐はすぐにパッと手を離したけれど、自分の身に起きたことを理解した瞬間、急激に体温が上昇して、顔面が爆発しそうになった。
「や、やだ! ばか……っ! えっち! ヘンタイ!」
おそらく真っ赤であろう顔のまま、甲斐をぽかぽかと殴る。
「いや、今のは……許せ。わざとじゃない」
「ううう、わかってるけど……っ」
今のは事故だし、もとはといえば自分の不注意が原因だ。それなのに、なんでこんなに取り乱してるんだろう……。
自分で自分がわからないまま甲斐の胸元を叩き続けていると、両手首をがしっとつかまれて動きを封じられた。