溺愛ペット契約~御曹司の甘いしつけ~
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物語前半は、ロマンチックで胸がドキドキする展開だった。
中世ヨーロッパ風の世界観を舞台に、とある王国の王女エマと彼女の護衛をつとめる騎士フィリップが、恋仲になるまでの様子が描かれていた。
『エマ……僕と君では、住む世界が違う』
『わかっているわ。でも……そんな理屈じゃ抑えられないほど、あなたのことが好きなのよ、フィリップ』
エマはなかなか積極的なお姫様で、煮え切らないフィリップをグイグイ押して、とうとうふたりは一夜を共にしてしまう。
それをきっかけに、ふたりは惹かれあう気持ちが止められなくなった。
しかし身分差から結ばれない運命にあるふたりは駆け落ちを試みることに。
冬の間じゅう雪に囲まれた寒い土地へと逃げたふたりは、今まで住んでいた豪華な城とは正反対の、粗末な山小屋で新しい生活を始めた。
その暮らしは質素だったけれど、エマもフィリップもお互いがそばにいてくれればそれだけで幸せだった。
『僕とこうなったこと、後悔してない?』
『後悔なんかするわけないわ。私、生まれてから今日までの中で、今が一番幸せよ』
暖炉の前でそう語り合ったり、エマの作ったシチューを二人で食べたり、ときには二人が身体を温め合うドキッとするシーンがあったり……。
とにかく幸せそうな二人は雪景色をものともしないアツアツぶり。
そのままおとぎ話のように、“ふたりはいつまでも幸せに暮らしましたとさ”で終わったら後味もよかったのだけれど……。