溺愛ペット契約~御曹司の甘いしつけ~
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「えーっ。フィリップが可哀想……」
ソファに体育座りして本を開いていた私は、思わず声に出して呟く。
レオンも悪いヤツじゃなさそうだけど、エマにはフィリップと幸せになってほしいのにな。
そんなことを思いながらふと壁の時計を見上げると、もうすぐ六時になろうとしていた。
私、二時間も読んでたんだ。でもまだ続が気になるんだよね……。
私は本に視線を戻し、続きを読もうとページをめくる。
するとそこに、二つ折りにされた一枚の小さな紙が挟まっていて、私は目を瞬かせた。
「しおり……? ではなさそう」
何気なく開いてみると、女性の文字で何か書いてある。
そして内容を理解すると、どくん、と胸が大きく脈打った。
【蓮人に飼われるのはもう飽きた。クロエはひとり立ちします。さよなら】
クロエ……飼われる……。これを書いたのはおそらく、前の……。
「……バカ甲斐。犬が文字を書けるわけないじゃん」
悪態をついても、少しもスッキリしなかった。
……うそつき。やっぱり、人間の女の人を飼っていたんだ。
どうして“犬だ”なんて嘘をついたのよ。何か後ろめたいことでもあるわけ?
生まれた疑念は黒い雲のように胸に広がって、読書どころじゃなくなった私はメモを凝視する
騙されていた腹立たしさがこみ上げるのと同時に、何故だか胸がズキズキと痛い。
……やだな。こんなの、まるで嫉妬してるみたい。