溺愛ペット契約~御曹司の甘いしつけ~
「違くねえよ。恋人想いのお前のことだから、傷が癒えるのにはまだ時間がかかるんだろう」
違うよ……。蓮人は、私のことを買いかぶりすぎてる。
本当に恋人想いだったら、今あなたと暮らしてなんかいないし、あなたの腕の中で、ドキドキしたりもしない。私は、ずるいヤツなんだよ……。
それでも蓮人の腕の中は不思議と心地よくて、ドキドキは収まらないけれど、感情の波は穏やかになった。
そっと体を離すと、私を気遣うようなあたたかい視線が降り注ぐ。
「落ち着いたか?」
「……うん。もう、平気」
「無理するなよ」
優しい声色とともに、ぽんと頭の上に手を乗せられる。
周りからはやっぱり複数の好奇の目があったけど、蓮人は完全に無視して再び私の手を引き、堂々と歩きだした。
私みたいな地味な女が蓮人みたいな男性と一緒にいるのは、さぞかし似合ってないんだろうな。
でも、蓮人は一向にそんなことは気にならないみたいで、むしろ見せつけるような行動すらするから、私は映画やドラマの主人公になったような錯覚を起こしてしまう。
それがうれしくて、同時につらい。この恋にハッピーエンドが訪れることはないのに、淡い期待を抱いてしまいそうになるから――。