溺愛ペット契約~御曹司の甘いしつけ~
「お前は払う必要ない。俺の勝手で送ってきただけだ」
「いや、でも」
「それに、俺の勘が正しければ、お前はこれから金が必要になる」
「……なにそれ。どういう意味ですか?」
意味不明の予言に首を傾げて固まっている間に、タクシーの左側のドアが開く。
甲斐は私の問いかけには答えず、先に降車して外に出てしまう。
何なのよ……お金が必要になるって。
腑に落ちないまま自分もタクシーを降りると、車のそばにたたずむ甲斐が私に手のひらを向けた。
「携帯かせ」
「え。……なんで」
「ペットが主人の連絡先を知らないでどうする」
し、しつこい……。その設定まだ続いてたの?
でも、それさえクリアすれば今日のところは家に帰れるんだよね。そしたらこの男の連絡先なんてこっちで勝手に消しちゃえばいいし、二度と会うこともないか。
「どうぞ。必要なとこ以外触らないでくださいね。あ、あとこれも」
スマホを渡してから、上着を借りていたことを思い出し、脱いだそれを押し付けるように彼の方に差し出した。