溺愛ペット契約~御曹司の甘いしつけ~


その夜、先にマンションへ帰っていた私は、キッチンに立ち夕食の支度をしていた。

蓮人が見たら“そんなことしなくていい”と言うかもしれないけど、毎日外食やご馳走ばっかりじゃ体に良くないと思うし、何よりヒマなんだもん。

会社帰りに買ってきた食材で作るのは、ホワイトシチューとサラダ。もちろんお米も炊飯器にセットした。

簡単なものばかりなのでほとんどの準備はすぐに終わり、あとはシチューを気長に煮込むだけ。

けれど焦がしてしまわないよう、コンロのそばに立ったままで【幸福の雪姫】の続きを読むことにした。

しおり代わりに挟んである例の手紙は一旦表紙の裏に移動させ、私は文字を追い始めた。







場面はお城から山小屋に変わって、そこではフィリップが相変わらずつつましい生活を送っていた。

そんな彼のもとに、ある日リリィという名の魔女がやってきた。魔女といえどよくおとぎ話に登場するおばあさんではなく、十五・六歳くらいの可愛い少女だ。


『ねえねえ、アナタ、この辺りで一番フビンな男として魔女仲間のあいだで有名になってるわよ? せっかく駆け落ちしたのに、残念だったね』


初対面にも関わらず訳知り顔で語る魔女に、フィリップは怪訝な顔をした。


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