溺愛ペット契約~御曹司の甘いしつけ~
『なんできみはそんなことを知っているんだ?』
『魔女には魔法の修行以外娯楽がないからね。なんでも見たいものを映せる泉で、人の生活を覗き見るのが流行ってるの』
『……悪趣味だな』
『まあそうかもね。ちなみに一番楽しいのが他人の恋愛を覗き見ること。魔女に恋愛はご法度だから、上手くいってる人たちを見てキーって妬んだり、振られた人にざまーみろって思ったりさ』
『……さらに悪趣味だな』
呆れかえるフィリップだけど、リリィの話には続きがあった。
そうやって他人の恋愛を冗談半分に面白がっていた魔女たちのなかで、エマとフィリップの恋愛だけは誰も茶化さないのだという。
それどころか、あれが理想の恋人たちだと憧れ、ひっそりと二人を応援するようになったそうだ。
『だけどさ、結局お姫様はお城に帰っちゃって、アンタは毎日寂しそうにしてる。お姫様の方だってそう。今、他の人と結婚させられそうになってて、毎日アンタを思って泣いてる』
エマが、自分のせいで泣いている……。それを知っても今の自分には何もできない。自分の無力さが情けなくて、フィリップの表情が曇る。
リリィはそんな彼を歯がゆく思い、とうとうこの山小屋へ来た目的を告げた。