溺愛ペット契約~御曹司の甘いしつけ~
「お、おかえり……なさい」
「ただいま。いいとこに差し掛かってるな、それ」
手元をのぞき込む蓮人がうれしそうに言うけれど、いいとこ?と疑問に思った私は反論する。
「うそ……。だって、フィリップ、意味わかんないよ。せっかくリリィが願いをかなえてくれるって言ってるのに、こんなの」
「まあ、第三者から見ればな。俺はフィリップの気持ちがわからないでもないが」
フィリップを庇う蓮人だけど、私にはよくわからない。どちらかというとエマに感情移入してしまって、そんな願いを魔法で叶えられたら、たまんないなって思う。
まあ、まだ最後まで読んだわけじゃないから、何とも言えないけど。
「……ふうん。あ、そうだ、シチュー作ったの。食べる?」
コンロの火を止め、鍋の蓋を開けて見せる。立ちのぼった湯気と漂うまろやかなミルクの香りに、蓮人がうっとりしたような表情を浮かべた。
「食う。すげえ腹減ってるんだ。……でも悪かったな、夜の食事どうするかってちゃんと決めてなかったから、気ぃ遣ったんだろ」
「べ、別にそんな大したことじゃないよ。作りたかったから作ったの。シチューなら、蓮人がもっと遅く帰ってきたとしても温めて食べられるしね」
かすかに振り返って微笑むと、蓮人が慈愛に満ちた眼差しで私を見た。