溺愛ペット契約~御曹司の甘いしつけ~
「稀華。……クリスマスのことだけど」
背中を向けたまま勝手に落ち込んでいると、ぼそっと蓮人が呟いた声が聞こえて、私はすかさず振り向く。今、クリスマスって言ったよね……?
蓮人は急に体の向きを変えた私に一瞬面喰って、けれどすぐに穏やかな微笑を浮かべた。そんな顔をされると、悪い返事ではないのかなって、期待しちゃうんですが……。
そんな私の切実な気持ちを知ってか知らずか、蓮人は布団の中で向かい合った私の両手をぎゅっと握った。
「待たせて悪かったな。……叶えてやる。お前の願い。だからイブの夜、ちゃんと空けておけよ?」
「……っ、うん」
うれしい……! 言わなければよかったと後悔していた願いだったけど、勇気を出して言ってよかった。何度もコクコク頷く私に、蓮人はその日の注意事項を告げる。
「あと、俺はその日“飼い主”じゃねえから……いつもと態度が違うかもしれないが、恋人なら受け入れるように」
「わ、わかりました!」
「あとはまぁ、お前が楽しんでくれれば俺はそれで……稀華?」
そのとき蓮人に顔をのぞき込まれそうになり、慌てた私はつないだ手をするっと解いて、転げ落ちるようにベッドを抜け出す。
やばいやばいやばい。……嬉しいからって、泣けてきちゃった。
このところ情緒不安定だったから、蓮人が帰ってきて、しかも私の望んだ答えをくれて、妙に感激しちゃったみたい……。彼が恋人になってくれるのは、たった一日だけなのに。