溺愛ペット契約~御曹司の甘いしつけ~
「ご、ごめんっ。泣くほどのことじゃないよね。ちょっと顔洗ってくる」
取り繕うように早口で言って、寝室を出ようとしたその時――ぐい、と肩をつかまれて強引に振り向かされた。
そうして情けない泣き顔を蓮人に晒してしまうと、何故だか余計に涙腺が緩んで、新たな涙がぽろっと目尻を伝った。それを見た蓮人は私を強引に抱き寄せて、耳元で囁き掛ける
「泣くなら……俺の胸で泣け」
――トクン、と胸が鳴る。
優しい言葉と蓮人のぬくもりに、ますます涙を誘われてしまう。
いつものことだけど、蓮人はペットを甘やかしすぎだよ……。今のセリフは、恋人に向けるそれとどう違うの?
「……なんでそんなに優しいこと言うの? その、まだ……クリスマスじゃないのに」
少し顔を上げ、潤んだままの瞳で上目遣いに彼を見ると、蓮人はばつが悪そうにパッと私から視線をそらした。
「……予行演習、だ」
「予行……? 本番前にリハーサル……みたいな?」
「ああ。……そういうことにしとけ」
ぶっきらぼうに呟いた蓮人は、もうこれ以上は突っ込むな、とでも言うように、私の後頭部を引き寄せ自分の胸にくっつけてしまう。
『そういうことにしとけ』ってなによ……。本当は何か別の理由があるみたいじゃない。……なんて、自分に都合のいい解釈だよね。
そう思っても確実に胸はドキドキ高鳴っていて、ごまかしようのない気持ちが心にあふれていた。
やっぱり、私……蓮人のことが、好きだ。