溺愛ペット契約~御曹司の甘いしつけ~
「メリークリスマス、稀華」


いくら蓮人が好きでも気持ちを口に出すことはやっぱりできないし、クリスマス前に気まずくなってしまうのも困る。というわけで、それからの数日はつとめて平静を装う日々を過ごした。

幸い、蓮人は週末も忙しく接待ゴルフに出かけてしまったり、家にいても書斎にこもっていたりしたため、顔を合わせている時間はそれほど長くなかった。

もちろん寂しさはあったけれど、クリスマスの約束を励みにして心のバランスを保っていた。先月のお給料をはたいてプレゼントも買ったし、あとは時間が過ぎるのを待つだけ……。

そう思っていた私に対して、クリスマスが近づくにつれ蓮人の様子がおかしくなり始めた。

何がきっかけなのかは、全くわからない。でも、クリスマスのちょうど一週間前くらいに、仕事から帰ってきた蓮人の口もとに傷ができていたことが気になっていた。


「……どうしたの? その傷」

「何でもない。……風呂、入ってくる」


そのとき、私の追及から逃れるようにしてバスルームに消えた蓮人の背中が、見たことのない影を纏っている気がした。



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