溺愛ペット契約~御曹司の甘いしつけ~
「その時のルームメイトの一人が、アイツだ。見た目も声もうるさい関西人」
「あっ! もしかして明神さん?」
そういえば彼も“アメリカ暮らしが長い”とか言っていたっけ。日本人同士なのに、アメリカで友達になったなんて不思議な縁だな。
「そこですぐに思い当たるとはお前もなかなかひどいな」
「あ。……ご本人には内密に……」
「さあ、どうするかな」
蓮人はそう言って楽しそうに笑いながら、ブランチの準備が整ったダイニングテーブルの椅子を引いて座った。先ほどのオムレツのほかに、コンソメ仕立ての野菜スープ、トースト、フルーツまで切ってくれてある。
私も彼と同じように向かい側に腰を下ろすけれど、その間ずっと蓮人の様子を注意深く観察してしまう。
なんか、今までそっけなかったのが嘘みたいに、今日はすごく機嫌いいみたいだけど……一体どうして?
「あのさ、今日って……」
とうとうクリスマスイブですけど、いかがいたしましょう?
そういう意味でおそるおそる尋ねると、蓮人はオムレツを咀嚼しながら決まりきったことのように平然と言ってのける。
「ああ、暗くなる頃に出かける」
「ど、どこに?」
あまりにさりげない言い方だから、近所のスーパーではあるまいな……と心配になってくる。そんな私に、蓮人は持っていたフォークを静かに置いてまっすぐこちらを見つめ、教えてくれる。
「色々。でも、これだけは教えてやる。……今夜はずっと、二人きりだ」
かぁぁっと、頬に熱が広がった。昼間からなんと甘くて危険なセリフを……。
もしかして、すでに“恋人”設定が始まっているのだろうか。お願いしたのは自分なのに、ドキドキし過ぎてきちんと対応できる自信がない。