溺愛ペット契約~御曹司の甘いしつけ~
「そ、そーですか……」
絶対に赤くなっているはずの顔が見えないよう俯いて、ぼそっと呟く。
そのまま下向き加減でもそもそとオムレツを食べていると、テーブルの向こうからにゅっと腕が伸びてきて。
「稀華」
「うん?」
顔を上げるなり、口の端に彼の指が触れて軽く心臓が止まりそうになる。
な、なに……?
「ケチャップ」
苦笑しながら言われて、もしかしてついてるの?と思っている間に、骨ばった親指にぐいっとその部分を拭われた。
それだけでも恥ずかしいのに、次の瞬間目の前の蓮人はケチャップのついた親指を自分の口へ近づけてぺろりと舐めるものだから、もともと熱かった顔がさらに火照ってくる。
こんな恥ずかしいイチャイチャを繰り広げるなんて、やっぱり恋人設定は今から始まっているんだ……。
「じ、自分でできるのに……」
消え入りそうな声で抗議するけど、今日の蓮人はさすが恋人なだけあって、私をドキドキさせることに全力を傾けているみたい。
「ンなのわかってるよ。お前の恥ずかしがる顔見たかっただけ」
悪戯っぽく微笑まれ、腹立たしい反面胸がきゅうんっと鳴いた。
蓮人ってば、今日はずっとこんな感じで私をからかってくるのだろうか。心臓がいくつあっても足りないよ……。