溺愛ペット契約~御曹司の甘いしつけ~
「じゃあ行くぞ、姫。そろそろ迎えの車が来てるはずだ」
ひとりもじもじする私の手を取り、エスコートするように部屋から連れ出す蓮人。
……なんだか、シンデレラにでもなった気分だ。偶然ドレスの色もそれっぽいし、今夜だけは蓮人のお姫様でいられる魔法がかかっているんだもんね。
でも、十二時になったらこの魔法は……なんて。今はそんなこと考えるのやめよう。姫でいられる時間をめいっぱい楽しまなきゃ、損だよ。
*
「なにこれ……」
マンションの一階に降り、外に出たところで私は口をあんぐり開けて固まった。
今、目の前の道路に“迎えの車”とやらが止まっているんだけど……。パール系の白い輝きを放つラグジュアリーな外観、そして異様な長さの車体、こ、これはもしかして。
「これって、リムジン……ってやつ?」
「ああ。今日は、このリムジンで都内のイルミネーションを回ろうかと思ってる」
「え。乗るの? 私たちがこれに?」
蓮人の顔と車とを見比べて、挙動不審にきょろきょろする私に蓮人が苦笑する。
「当たり前だろ。何のためにここに停まってると思ってるんだ」
そしてスタスタと車のそばに歩いていき、重厚なドアを開けて私を呼ぶ。
「どうぞ、お姫様」
「う、うん」
本当にこれに乗って行くんだ。私、セレブでもないのにすみません……。小心者の私はよくわからない何かに謝ってから、おそるおそる未知の空間に足を踏み入れた。