溺愛ペット契約~御曹司の甘いしつけ~
「れん――」
パッと顔を上げると、妖艶に細められた瞳と視線が絡んで。
「どんなことをしても。どんな声を出しても。誰にもばれねぇってわけだな」
そんな不埒な発言をしてわずかに口角を上げた蓮人に、カッと火が付いたように顔が熱くなる。この御曹司様、いったい何をする気なんですか……!?
「……冗談だ。しかしこれしきのことで赤くなって、大丈夫かよ」
あからさまに動揺した私の顔を見て、蓮人がクスクス笑っている。
正直、大丈夫ではないよ。こんなにも甘い恋人同士を演じてくれるなんて思わなかったから、すでにギブアップ寸前です。
そのときふと目の前のバーカウンターが目に入り、私は少しお酒の力を借りてみようかと思いつく。ほんのり酔えば、私だって積極的になれるかもしれないし。
「ここに置いてあるお酒って、飲んでもいいの?」
「ああ、もちろんだ。乾杯しよう」
蓮人は並んだボトルの中からシャンパンを手に取り、慣れた手つきで栓を開けてくれる。そうして二つの細いグラスに金色の液体を注ぐと、ひとつを私に手渡した。
「メリークリスマス、稀華」
「……うん。メリークリスマス」
穏やかな微笑を向けられ、グラスがチン、と重なる。シャンパンに口をつけると、口当たりの良いフルーティー甘さが口の中に広がり、上品な香りが鼻から抜けていった。