溺愛ペット契約~御曹司の甘いしつけ~
「ほら、見てみろ」
坂の頂上へ着くと、蓮人が白い息を吐き出しながら、前方を指さした。
そこは小さな展望台のようになっていて、金属でできた手すりの向こうには、大都会の夜景が広がっていた。
「わぁ……」
さっきのイルミネーションとはまた違う、光の海を見下ろしているような美しさに、私はただ見惚れる。すると、蓮人が私の背中を包み込むように後ろから抱きしめた。
ドキン、と胸が脈打った次の瞬間、冷たい唇が耳に触れ、甘く囁きかける。
「夜景なんて飽きるほど見てるはずなのに……お前と一緒だと、いつもよりずっと綺麗に見えるのはなんでだろうな」
蓮人……。それって……。
思わず彼も同じ気持ちなんじゃないかと期待しそうになるけど、すぐにそんな自分をたしなめる。
蓮人が思わせぶりなことを言うのは、“恋人役”を演じてくれていからだ。真に受けちゃだめ。きっと、彼の本心ではないのだから。
でも……どうせなら私もこの甘い雰囲気に乗じて、少しは彼女らしいことを言ってもいいかな?