溺愛ペット契約~御曹司の甘いしつけ~
今日ばかりは自分で自分に“ステイ、ステイ!”と言い聞かせながらリムジンに戻り、それでも持て余すドキドキのせいで車窓を楽しむ余裕もなくなってしまった。
隣にいる蓮人はとりあえず変に接近してきたりしないし、むしろ優雅に足を組んで座ってくつろいでいるけれど、私はすっかり緊張してガチガチだ。
「お前、フランス料理は好きか?」
そんな何気ない質問も“好きか?”という部分だけがひとり歩きして耳に届き、勝手に取り乱したり。
「す、好きなわけ……っ!」
「あ、嫌いだったか? まずいな……だったら今夜の食事のこと考え直さねえと」
「食事?」
「だから、嫌いなんだろ? フランス料理」
フランス料理……? なんだ。恋愛的なことを聞かれたわけじゃないのね。照れ隠しに頭をかきつつ、今度はちゃんとした返事をする。
「いやごめん、好きとか以前に……たぶん、食べたことない」
「なんだ、そうか。なら、楽しみにしてろ」
自信をのぞかせた笑みを浮かべる蓮人に、私は問いかける。
「これからレストランに行くの?」
「いや、違う。今夜押さえてあるホテルの部屋に、三ツ星レストランの料理を運んでもらう手筈ができてるから、食事は部屋だ」