溺愛ペット契約~御曹司の甘いしつけ~
す、すごいなぁ……。レストランの料理を、部屋まで運ばせちゃうんだ。今日はイブだし、レストランだって忙しいはずなのに、私たちのためだけに料理が届くなんて。庶民の私としては、申し訳ないからこちらから食べに行きますってヘコヘコしたくなるところだ。
それにしても“部屋”って。そのワードだけで、食事のその後のことまでいろいろ妄想してしまう……!
こら、稀華、ステイ!
煩悩と戦うこと数十分。目的地に近づいてきた頃、蓮人が窓から外を覗いて言う。
「あまり建物に近づき過ぎる前に見とけ。これが、見せたかった最後のイルミネーション。そして、今から行くホテルだ」
「えっ。どれどれ?」
蓮人の方に身を乗り出し、窓の外を見つめる。視線の先にそびえるのは、彼の住むマンションと同じくらいの高層ビル。その壁面にびっしりとライトが取り付けられているようだけど、あの色、あの形は……。
「クリスマスツリー!」
子どものように目を輝かせた私に、蓮人もふっと柔らかく微笑んでくれる。
「……ああ。やっぱり、今日くらいは見ておかないとな」
「そうだね。ザ・クリスマスって感じがする。キレイ……」
今までの人生で見た中で一番巨大なツリーかも。なんて思いながらビルの輝きをを見つめていると、車は徐々に建物に近づいていき、とうとうそのツリーの根元、目的地のホテルに到着した。