溺愛ペット契約~御曹司の甘いしつけ~
「あのね……私」
あなたのことが好き――。そう喉元まで出かかった時、タイミングがいいのか悪いのか、エレベーターが目的の階に到着してしまう。
ドアが開いて、エレベーター内にこもった熱く濃密な空気がふっと緩むと、私は我に返った。
「ご、ごめん……なんでもないや」
パッと彼から離れた私は、くしゃっと髪をつかんで、何事もなかったかのように笑いかける。
私ってば、何を口走ろうとしてたんだろう。言ったって、どうしようもないんだから……蓮人を困らせるだけだよ。
蓮人はしばらく私の本心を探るように見つめてきたけれど、やがて目を伏せると気を取り直したように言った。
「まずは、腹ごしらえだ。……続きは、そのあと」
「は、はい……」
こくんと頷いて、蓮人に手を引かれるまま廊下の絨毯を歩く。
この状況……正直、どんな三ツ星レストランの料理でも、喉を通る気がしないよ。
熱に浮かされた心とカラダを引きずって、私は部屋へ向かった。