溺愛ペット契約~御曹司の甘いしつけ~
「じゃあ、追いかけなよ」
「え……?」
ふっと苦笑した理一が、ポケットのチェーンをじゃらじゃらと鳴らしながら財布を取り出す。その中から一万円札を五枚ほど取り出し、私にずいっと差し出してきた。
「今まで、まれに出してもらってた分……こんなんじゃ足りないだろうけど、タクシー代くらいには、なるだろ?」
「い、いいよそんな……っていうか理一、このお金どこから」
まさか、消費者金融? それか、美鈴さんや哲さんからの借金だったり?
ぐるぐるそんな思考を巡らせる私に、理一は不愉快そうな顔をしてお札を無理やり握らせる。
「あからさまに不審な顔するなって。大丈夫。変な金じゃない。今、日雇いでいろいろやってるんだ。デビューは決まったけど、すぐに金になるわけじゃないから」
あっ。そういえば……。美鈴さんからは聞いていたけど、理一本人の口から“デビュー”の文字が出るのは初めて。
こうして私のところにきたということは、九十九パーセントが百パーセントに変わったんだ。