溺愛ペット契約~御曹司の甘いしつけ~
「私のハッピーエンドは、私が決める」
side 蓮人
*
「……ちょっと早く来すぎたな」
羽田空港の国際線ロビー。そのベンチに腰掛け、腕時計を確認した俺は呟いた。
これから、マレーシアのクアラルンプールに向かう。もちろん仕事だが、本当は年が明けてからでよかった出張をわざと前倒しにした。
大勢の人が行き交う昼間と違い深夜便を待つ人は少なく、静かなのはいいが余計な音がないぶんあれこれ考えてしまう。
たとえば、そう。あのとき、稀華が言おうとした言葉を、聞いておくべきだったのではないか……とか。
『しないよ。だって、私は蓮人のことが――』
俺に抱かれて後悔しないかと、尋ねたあの時。その先に続く言葉を最後まで聞くことができずに、俺は彼女の口をキスで封じた。もしもそのまま聞いていたら、俺は自分を抑えることができなかっただろう。
感情のままに彼女を抱いたら、きっと手放せなくなる。それは、何としてでも避けなくてはいけなかった。
――成瀬理一との約束が果たせなくなるからだ。
成瀬に関して、もともとは“稀華の元彼氏でどうしようもないヒモ男”というくらいの認識しかしていなかった。もちろん、顔も知らない。
そんな俺が奴を偶然目にしたのは、先月出張した先の青森でのことだった。