溺愛ペット契約~御曹司の甘いしつけ~
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太平洋に面し、自然あふれる環境のなかで、東北の主要都市として成長を続ける青森県八戸市。
そこに俺は都市開発の仕事で用があり、地元の担当者との打ち合わせや現地視察に追われていた。
いや、追われていたというか、わざと自分を追い立てるように仕事に没頭していたのかもしれない。
というのも、出張前日にクリスマスに関して稀華が変なことを言い出したせいだ。
『その日、一日だけでいい。……恋人に、なってくれない?』
あのときの彼女は冗談を言っている風ではなく、瞳も声色も切実だった。
それは一般論的に、クリスマスを一人で過ごすのが嫌だ、という見栄や、誰でもいいから一緒にいて欲しい、というような一時しのぎというわけでもなさそうで、俺は動揺してしまった。
稀華のことは、初めて会った時から気に入っている。だから彼女を“飼う”ことにしたのだ。
だけど、前の男のことをまだ引きずっているであろう彼女を、なし崩し的に自分のものにするのは気が引けて、あくまで“飼い主”として、今まで見守っていたつもりだったのだが……。
次第に彼女を想う気持ちが形を変えていることにも、気づき始めていた。