溺愛ペット契約~御曹司の甘いしつけ~


空いている店内に入ると、私はすぐATMの前に立ち、操作を始めた。

暗証番号は、いつでも忘れないよう理一の誕生日にしてあるんだよね……。

四桁の数字を入れて、下ろす前にいちおう残高確認。

理一の欲しがってるエフェクター代はあるだろうけど、それを下ろしてしまうと大して残らないだろうから、給料日までどうやって生活しようかな……。

頭を悩ませていると、パッと画面が切り替わり、現在の口座の残高が表示される。

そこに並んだ数字が想定外すぎて、私はしばらく瞬きを繰り返して画面を睨む。


「ん? なんで、こんな少ないの……」


私、何か間違えた? いやいや、東京に来て口座ひとつしか作ってないし、間違いなくこれが私の現在の全財産……って、ええっ!?

私は思わず一桁ずつ指さし確認しながら、声に出して残高を読み上げる。


「はっぴゃく、きゅうじゅう、さん、えん……」


まさかの三桁に、さあっと血の気が引いていく。

な、ななななんで? 今月、いつもと違う引き落としとかあったっけ?

私はくるっと後ろを振り返り、並んでいる人が誰もいないのを確認すると、もう一度カードを入れ直して同じ操作をしてみた。

でも、やっぱりそこに表示されるのは……“893円”ぽっちの残高のみ。



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