溺愛ペット契約~御曹司の甘いしつけ~
苦悩しながら飛行機に乗り、夜遅くに東京の自宅マンションに帰り着いた。
稀華はさすがに寝てるだろうな、と寝室を覗いたがその姿はなく、彼女はリビングのソファでおそらく帰ってきた格好のまま、電池が切れたように眠っていた。半開きになった唇の隙間から、かすかに酒の匂いがする。
……稀華が外で飲んでくるなんて、珍しいな。いったい、誰と一緒にいたんだろう。
小さな嫉妬心が、芽を出す。さらにライブハウスで抱いた焦燥もいまだ消えることなく、ちりちりと胸が焦げるような痛みがあった。
そんな精神状態のままで酔った稀華の寝姿を目にして、男として反応しないわけもなく、俺は思わずつぶやいた。
「……襲うぞ、コラ」
いや……落ち着け。今、コイツを抱いて何になる……?
これ以上愛しさを募らせたところで、共同生活は残りあとわずかしかないかもしれないというのに。
俺は自分の内側にこもった熱を逃がすように、ふう……と長く息をつく。そして、平常心を装い寝ている稀華に声を掛けた。
「……せっかく予定を一日早めて帰ってきたっつーのに、ひどい有様だな」
うっすら瞳を開け、ぼーっとした顔で俺を見つめる稀華。
彼女は「おかえりなさい」と何とか言って体を起こそうとしたものの、かなり酔っているらしく再びソファに沈んでしまった。
恥ずかしそうに笑う彼女の無防備な姿に、逃がしたはずの熱が舞い戻ってくるのを感じる。