溺愛ペット契約~御曹司の甘いしつけ~
「ちょ、ちょっと待ってください。あなた、まれのことが好きなんじゃないんですか?」
成瀬が急に、今までにない取り乱した様子を見せる。俺はその質問に正面から答えることはせず、逆に聞き返した。
「そうだとしたら、ペットだなんて扱いにはしないでしょう?」
「そりゃ、そうかもしれないけど……俺は、てっきりこう思ってましたよ。ペットというのは何かの口実で、実際は恋人と同じようなものだと」
……口実、か。確かにそうかもしれない。
最初は、稀華に気を遣わせないため。気兼ねなく甘えてもらうための口実で。それは次第に、彼女に惹かれていく自分を抑えるための口実になり……。
今では、彼女を手放してもいい理由として、自分を無理やり納得させる口実に変わった。
「違いますよ。……現に、一緒に暮らしてから今まで、俺たちは男女の関係になってない」
「そう、だったんですか……なんだ。じゃあ、俺は遠慮しなくていいんですね」
安堵と、希望を見出したように目を輝かせた成瀬に、嫉妬と羨望が入り混じる。
俺だって、本当は……その時が来たら、稀華を自分のものにするつもりだった。そう、目の前にいる彼のように、自らが抱く夢を叶えた、その時に。
なぜなら、その夢を思い出させたのは他でもない稀華で、彼女がいるからこそ追いかけられるものだった。だから、この想いを伝えるのも、夢が叶ってからだって、自分に言い聞かせて――。