溺愛ペット契約~御曹司の甘いしつけ~


……けれど完全に、一番負けたくない相手に先を越されてしまったというわけだ。

胸の内で自嘲し、すでに望みなどほとんど捨てかけている俺だが……心残りがひとつだけある。


「……ひとつ、お願いがあるのですが」

「お願い?」


不思議そうに首を傾げた成瀬。俺は小さく頭を下げながら、こう言った。


「クリスマスを、一緒に過ごす約束をしています。それを最後に、彼女には二度と関わらないと約束するので……彼女を迎えに来るのは、それまで待ってもらえませんか?」


その日を心待ちしている稀華のために、いろいろと喜ばせる準備をしてある。そして、束の間の恋人としてでも、最後に彼女の笑顔をたくさん見られたら……俺はもう、それで十分だから。きちんと、別れを告げるから。

祈るような思いで、成瀬からの許しを待った。けれど、彼の反応は全く好意的なものではなかった。


「……ちょっと、図々しくないですか?」


顔を上げた先の成瀬は、苛立ちに表情を歪ませていた。


「まれのことはペットだから、あっさり手放せる。さっきまでそういう風に話を進ませていたくせに、クリスマスは一緒に過ごしたいだなんて、おかしいですよ」

「……勝手なのは重々承知です。でも、ずいぶん前から約束していたんです。……最後にそれだけ叶えてやったら、俺はすぐに消えますから」


必死に頼み込む俺に、成瀬は薄気味悪いような表情を浮かべる。それでも諦めるそぶりを見せない俺に最後にはため息をついて、仕方がなさそうに言った。


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