溺愛ペット契約~御曹司の甘いしつけ~
「――蓮人!」
空港の静かなロビーに、俺の名を呼ぶ声が響いた。
まさか……そんなわけ。半信半疑で声のした方を振り向くと、そこにいたのは別の相手とハッピーエンドを迎えたはずの、彼女。
「稀華……?」
どうして彼女がここにいるのか。呆然として立ち上がることもできない俺のもとに、別れたときと同じドレス姿、その上にド派手な赤い男物ブルゾンを羽織った彼女が駆け寄ってくる。
あの服は、成瀬の……? いや、違う。あれはたぶん……。頭の中にある人物が思い浮かんだと同時に、ほんの二メートル先まで近づいた稀華が、手をメガホンの形にして叫んだ。
「私のハッピーエンドは、私が決めるっちゅーねんっ!!!」
ぎこちない関西弁に、肩の力が抜ける。しかし、それ以上にこみあげるのは、今まで抑えてきた、彼女への強い想い。
俺だって……本当はずっと、自分の手で、お前を幸せにしてやりたかったんだ。
稀華……お前も、それを望んでくれるのか?
ベンチから立ち上がった俺は、稀華に向かって両手を開く。世界中の誰より愛しい女を、この手に抱きしめるために――。