溺愛ペット契約~御曹司の甘いしつけ~
いきなり現れた謎の犬に困惑する私に対し、犬の方は尻尾を振り振り、かなり私に好意を寄せている様子で目の前にお座りした。
「ど、どこから来たのあなた……?」
答えてくれるわけないとわかっているけど、思わずワンちゃんに尋ねてしまったその時。
「クロエ!」
「やっぱここにおったか!」
どたどたとエントランスに駆け込んできたのは、二人の男女。
「明神さん……と、ナナセさん……?」
いつか職場でも遭遇した有名人コンビの登場に、ますます頭が混乱する。目を白黒させる私に対し、二人はあからさまに哀れむような目で私を見下ろしている。
「あのアホ……なんでよりによってクリスマスに女の子泣かしとんねん」
「タモさん、空港ってどこ? 羽田?」
「ああ、たぶんそう言うてた。……ほな行こか! 稀華ちゃん!」
「え? え?」
行くって、どこへ?
勝手に話を進める二人についていけるはずもなく、座ったまま二人を見上げてぽかんと口を開ける私。そんな放心状態の私を立ち上がらせたのは、明神さんの単純なひとこと。
「アイツに好きって言わんままでええんか?」
アイツ……どう考えても、蓮人のことに他ならない。この二人は、私を彼のもとまで連れて行ってくれるるもりみたいだ。
それなら、答えはひとつしかないよ――。