溺愛ペット契約~御曹司の甘いしつけ~
「いやです! このまま終わるなんて、絶対……っ」
拳をぎゅっと握って立ち上がった私に、明神さんが笑みをこぼして頷く。
「よし、決まりやな。詳しいことは移動中に話す。善は急げや、そこの兄さんにクロエ預けて行こか」
「合点承知!」
ノリのいい返事をしたナナセさんが、コンシェルジュの男性に“クロエちゃん”を預ける。
そういえば、ペットを預かってくれるシステムもあるんだっけ……。でも、マンションの住人以外もアリなの?
多少疑問はあったけど、コンシェルジュの男性は快くクロエちゃんを受け取り、クロエちゃんの方も男性に慣れているのか、大人しく私たちを見送ってくれた。
マンションの前には一台のカッコいいアメリカ車が停まっていて、私たちが出て行くと同時に運転手の男性が降りてきた。SPみたいなガタイのいい黒人男性……あれ? どこかで見た顔のような。
「つい最近、どこかでお会いしました……よね?」
日本語が通じるのかわからないけどとりあえず聞いてみると、彼は二カッと白い歯を見せて笑った。
「Oh! 覚えててくれてアリガトウです! リムジン運転してたのワタシです。お姉さんてっきり、レントしか見えてないと思ってました」
ああ、あの時の……!って、ずいぶん日本語達者だな。それに蓮人のこと呼び捨てにしてるけど、知り合い……?