溺愛ペット契約~御曹司の甘いしつけ~
『昔のことやけど、アイツ、なんや有名な文学賞の最終選考に残ってな。でも、結局は最終選考どまりやってん。それがショックで一度は書くこと辞めてしもたんやけど……正直な話、その話読ませてもろた俺らからしても、確かにあんまスッキリせん話でな』
『あー、【幸福の雪姫】でしょ? 蓮人らしい展開で、切ないのはいいんだけど、切ないまま終わっちゃうアレね』
『レントに言わせれば、あれはある種ハッピーエンドらしいですけど……お姫様の気持ち、ムシしてます』
三人の話にびっくりして何から聞こうか迷っているうちに、空港に到着してしまった。
でも、私がまだ途中までしか読んでいなかった【幸福の雪姫】。どうやらあの物語は蓮人自身が書いたものらしい。
今まで作者名を気に留めたことなんかなかったけど……さすがに甲斐蓮人という名前なら気づくはずだし、ペンネームでも使っていたのだろうか。
でも言われてみれば、蓮人らしい不器用な優しさの滲んだ作品だった気がする。
身分違いだからと、王女エマとの恋から自ら身を引いたフィリップ。それはきっと、エマの幸せを願ってのことなんだろうけれど、エマは本当に幸せになったの?
……ねえ蓮人。私が、本当のハッピーエンドを、教えてあげるよ。