溺愛ペット契約~御曹司の甘いしつけ~
「……なんか。ホント、ハッピーエンド……とはいえないね。切ない大人の童話って感じ」
「救いがなさすぎる、ってことで、その時出してた文学賞に最終選考で落選してな……でもなまじ最終選考まで残ってしまったもんだから、当時は相当落ち込んだんだ。いちおう目を掛けてくれた出版社もあって、本になることは叶ったが……売れ行きはさっぱりだった。あの本がボロボロだったのは、どこが悪いのか分析するために何千回と読んだせいだ」
蓮人は私の髪を優しく撫でながら、私の知らない昔の彼のことを教えてくれる。
明神さんたちに聞いていた通り、小説家を目指していたというのは本当だったんだな……。
「それに、ほぼ同じタイミングで、会社の方も忙しくなって……今のままじゃ、何もかもが中途半端になると思って、小説を書くのは一旦そこで諦めてしまったんだ」
「そういえば……そうだよね。蓮人は将来会社を背負って立つ存在なんでしょ? 小説家になろうとしてることは、ご両親に反対されたりしなかったの?」
私の素朴な疑問に、蓮人は苦笑しながら答える。
「反対はされないが、かといって背中も押されない。自分の責任でやれという感じだったな。わりと放任なんだうちの親。そのくせ、お前の本が売れたら会社のいい宣伝になるとか言って便乗する気も満々だったけどな」
「そっか……理解があって羨ましいな。私は親の反対を押し切って上京したから、今でもまだわだかまりがあるんだよね……」