溺愛ペット契約~御曹司の甘いしつけ~


娘が東京に行きたいって言ってるんだから、応援してくれればいいのに。そんな反発心があったから、地元に帰ることはおろか、ろくに電話もしていない。

でも……一度くらい帰らないとだめだよね。地元を出て行ったときとは私を取り巻く状況もガラッと変わっているし、いろいろ報告しなきゃならないことがある。


「成瀬のバンドがデビューするってのはすぐ地元で話題になるだろうが、その時お前からなにも話がないんじゃ、親御さん心配するだろ」

「……そうだよね。蓮人が出張に行っている間に、顔出してみようかな」

「ああ、そうしろ」


蓮人の穏やかで頼もしい笑みを向けられると、不思議と何もかもうまくいく気がした。

きっとたくさん叱られるだろうけど、家族だもん。ちゃんと話せばわかってもらえるよね……。

不安が落ち着いたところで、体も心も疲労がマックスだったために、急に睡魔に襲われた。

思わず大きな欠伸をした私に蓮人はクスッと笑って、私のおでこに軽くキスをした。


「俺は、お前が寝てる間にいなくなってると思うけど……連絡は欠かさないし、離れていてもずっとお前を想っているから……安心してゆっくり休め」

「うん……ありがとう。私も、蓮人のことをずっと想ってる」


寂しいのはもちろんあるけれど、気持ちさえ通じ合っていれば、半年だって、一年だって、彼を信じて待っていられる。

私はそんな安らかな気持ちで、最後まで蓮人の愛しいぬくもりを感じながら眠りについた。


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