溺愛ペット契約~御曹司の甘いしつけ~
下世話な話題を振られ、笑顔がピシッと固まる。
無言の私の顔を、ちんぴら男はサングラスを下にずらしていやらしい目つきでのぞき込んでくる。
ひいい、気持ち悪い~!
「わ、私はお酒とお話を楽しんでいただくだけのお店でしたっ」
きっぱり口にして、不穏な会話の流れを断ち切ろうとしたけど、男は全然空気を呼んでくれない。
「そうなの? じゃあ俺たちとも話そーよ」
馴れ馴れしく言った男は、コーヒーの紙カップを持つ私の手首を無理やりつかんだ。
「あっあの、困ります!」
「いーじゃん少しくらい。俺ら最近女っ気なくて寂しいんだよね~」
そんなこと知るかっ! 彼女欲しいならその風貌からなんとかしなさいよ!
胸の内で悪態をつきつつも、両手がふさがっていて抵抗ができない。
そのまま、喫煙所にいる彼の仲間のもとへ連行されてしまいそうになったとき。
「……やめとけよ。ソイツ、噛みグセあるんだ」
スッと背後に現れた長身の影が、低い声で冷静に告げた。
この、身体の芯まで響くような低音……それに、“噛みグセ”っていう妙なワード。
ある予感を抱いて振り返れば、そこにはやはり甲斐の姿があった。