溺愛ペット契約~御曹司の甘いしつけ~
「ああん?」
不快そうに眉をひそめたちんぴら男は私から手を離し、両手をポケットに手を入れて威嚇するように私の後ろに立つ人物をにらみつける。
だけど全然迫力はなく、ちんぴらより背の高い甲斐は逆に冷たい視線で相手を見下ろす。
「俺にしか懐かないようにしつけてある。アンタじゃ手に負えないってこった」
そんな言葉と同時に甲斐にぐっと肩を抱き寄せられ、ぴたりと体が密着した。
ちょ、ちょっと……近いって! 助けてくれたのは嬉しいけど、セリフがいちいちおかしいし!
「……チッ。なんだよ、男いるのかよ」
しかし意外に気弱だったらしいちんぴらはつまらなそうに舌打ちをし、すごすごと仲間のもとへ戻っていった。
ああよかった。めんどくさい喧嘩とかにならなくて。
助け方はともかく、いちおう甲斐にお礼言わないとだめだよね……。
「あの……あり、がと。でも、あなたに懐いた覚えはないんだけど」
肩をつかむ甲斐の大きな手を意識しないようにしながら、未だ近い距離にある彼の顔を見上げる。
するとシャープな顎がこちらを向き、ふ、と鼻で笑われた。
「尻尾振って待ってたくせに?」
「べ、別に尻尾なんか!」
「じゃあなんで電話してきた」
「それは……っ。ほかに、頼るあてがなくて……!」