溺愛ペット契約~御曹司の甘いしつけ~
「ただ、俺に甘えてろ」
「……なにこれ。何階建てなの」
ぽかーんと口を開けた私が見上げるのは、甲斐の住むタワーマンションである。
周囲にもビルはたくさんあるけれど、ひとつだけ桁違いに高い建物だ。
車は地下に設けられた住人専用の駐車場に止め、現在地上一階のエントランスに入ろうというところ。
ちなみにコンビニで買い込んだ食料の袋は、ふたつとも甲斐が持ってくれている。
「四十五階建て」
「へ、へえ……。で、あなたの部屋は?」
「ペントハウス」
サラッと言った甲斐だけど、私はその意味が分からず首を傾げる。
ぺんと……はうす? なんぞやそれは? あ、もしかして“テントが家(ハウス)”の聞き間違いかな。
「家がテントだなんて、なかなかワイルドな生活ですね」
「……誰が東京の真ん中で一人キャンプすんだよ。最上階って意味」
「あ、なるほど。さいじょーかい。……ええっ!?」
私はもう一度ビルの上の方に目をやり、驚愕の声を上げた。
きっと、このマンションで一番いい部屋ってことだよね。いったい月々いくら払ってるんだろう……。
そんなことを考えながら甲斐に続いてエントランスの自動ドアをくぐると、そこにはまるでホテルのようなフロントがあった。