溺愛ペット契約~御曹司の甘いしつけ~
「なんだそりゃ。まあそれなら、寝床がなくても別にいいんだな」
「うん。別に……えっ? もしかして床で寝ろ、的な?」
「そこまでは言わねぇけどな……ベッドはひとつしかないし、うちのソファは割と固いから、ちょうどいい場所が……」
考え込むように、顎に手を当てる甲斐。
私は別に、固いソファでも大丈夫なんだけどな。固いって言ったってまさか鋼鉄製なわけじゃないだろうし。
「私、ソファで全然――」
「ま、別に、そんなに考え込む必要もねぇか。俺と一緒に寝ればいい」
……はい? なんですかそのあり得ない提案は。
耳を疑って呆然としている間に、エレベーターは私たちを最上階まで送り届けた。
静かに開いたドアを先に出て行ってしまった甲斐を、私は慌てて呼び止める。
「ね、ねえ! 一緒に寝るとか無理でしょ! 私たち、いちおう男と女なわけで!」
くるりと振り返った甲斐は、真顔で私を見下ろしそっけなく言った。
「何を勘違いしてるんだ。さっきからお前はペットだって言ってるだろ。俺は気のある女をベッドに連れ込むわけじゃない。気に入りのペットと添い寝するだけだ」
そしてまた前に向き直り、甲斐の部屋へ続いていると思われるドアの方へ向かって行ってしまう。
なっ。何かすっごいムカつく~! 吠え掛かって噛みつきたいくらいだわ!
しかしどんなに腹を立てても、今の私は甲斐に拾われたペット。
派手に逆らうこともできず、ぷりぷりしながら飼い主の背中についていくしかなかった。