溺愛ペット契約~御曹司の甘いしつけ~
ソファの感触ひとつでまたも大袈裟な感動を覚える私に、甲斐が唐突かつデリケートな内容の質問を投げかけてきた。
「……で。帰りたくない理由ってのはなんなんだ?」
お尻の心地よさだけに集中していた私は、急に舞い戻った現実に深いため息をついた。
話さなきゃダメかな……ダメだよね。たとえペット待遇だとしても、泊まらせてもらうんだもん。
私は自分の膝に視線を落として、静かに話しだす。
「私と彼氏の関係が、あなたの言う通りだって……思い知らされたんです。ついさっき」
口にすると自然に、理一との最後のシーンが脳裏によみがえり、私の胸をぎゅっと締め付けた。
甲斐は無表情に私を眺めていて、あまり同情されたくない私は無理して口角を上げる。
「ホント、私はお金を運んでくるだけの存在だったんです。昔はそうじゃなかったと思うんだけど、いつからかな……今思えば、最近恋人らしいこと、なんにもしなくなってて」
自嘲気味に語りながら、天井のお洒落なペンダントライトを見上げた。
すごいなぁ……埃ひとつないや。そんな関係ないことを考えても、胸の痛みが誤魔化されることはなかった。
「だから、来月のクリスマスくらいは一緒に楽しい時間を過ごしたいと思って、お金貯めてたんですけど……それも、彼は自分のことに使うって言ってて。そのことに罪悪感もまるでないみたいだった」
ゴメンとか、そういう一言があったら、私も許せたかもしれないのに。
いやでも、どちらにしろ勝手に私のお金を下ろしていた件で、ダメになってたか……。
あれは今思い出しても、やっぱりあり得ない行動だよ。