溺愛ペット契約~御曹司の甘いしつけ~
「なんだ。ひとりじゃ寝れねえのか?」
苦笑しながら尋ねられ、ふるふる首を横に振る。
「まさか。子どもじゃあるまいし」
「そうか。でもお前……」
目そ細めて注意深く私を観察した甲斐が、静かに告げる。
「“心細い”って、顔に書いてあるぞ」
「え……」
うそ。私、この家に来てから、わりと元気に振る舞ってたと思うんだけどな。
自分では自分がどんな顔をしているのかわからず、頬に両手を当てながら近くに鏡のようなものがないか探してしまう。
「まあ、信じてた男に裏切られたわけだから当然か。……わかった。風呂は後にして、今夜はお前が眠るまでそばにいてやるよ」
低音ボイスが甘くささやいたのと同時に、私の髪を梳いていた甲斐の手が一束の髪をつかんで、そこにキスをした。
な、なんで急に優しいこと言うの。しかもなんで髪にキスするの。
ドキドキするな稀華。ペットの毛にキスくらい……するのよ、この人はきっと。
顔中に激しい照れが広がるのを感じながらも、私は必死で甲斐の申し出を断る。
「い、いいです、ひとりで寝られるから」
「遠慮するな。ペットの心のケアも飼い主の仕事だ」
「私は大丈夫だってば……ちょっと!」