溺愛ペット契約~御曹司の甘いしつけ~
まったく聞く耳を持たない甲斐は、強引に私の腕をつかんで、書斎の向かい側に位置する寝室へ連れて行った。
甲斐が部屋の明かりをつけると、夜景の見渡せる大きな窓と、その傍らに置かれた、スタイリッシュなローベッドが目に入った。
寝具は落ち着いたグレーで揃えられていて、いかにも“男のベッド”という雰囲気に緊張感が募る。
こ……こんなにもムーディなベッドで添い寝するの?
石のように固まった体で部屋の入り口付近に立ち尽くす私に対して、甲斐は迷いなくベッドに腰掛ける。
スプリングが微かにきしむ音のあと、甲斐が自分の隣のスペースをぽんぽんと叩いて言う。
「稀華。お座り」
「わ、私は犬じゃありません!」
「いいからさっさと来い」
私はむう、と頬を膨らませながらも甲斐のもとへ歩み寄ると、遠慮がちに腰を下ろした。
しかし隣にいる彼の顔を見る勇気はなく、ただ俯いて黙り込む。
「お前、明日仕事は?」
「え。……と、今日は何曜日でしたっけ?」
今日一日で色々ありすぎて、曜日感覚なんてぶっ飛んじゃったよ。