溺愛ペット契約~御曹司の甘いしつけ~


「金曜」

「じゃあ休みです。カレンダー通りの会社なので、日曜も」


前方の壁を見ながら短く答える。

私は休みだけど、理一は二日間ともバンドの練習が入っていて、放置プレイされる予定だった週末だ。


「そうか。……なら、飼い主の予定に付き合えるな」

「予定?」

「ああ。俺もこの土日は休みだが、実はまともに休めるのはひと月ぶりなんだ。やりたいことがやっとできる」


ダークブラウンの前髪をかき上げながらサラッと口にする甲斐だけど、ひと月休んでないなんて驚きだ。

それにしては、あまり疲れているように見えないのはなぜなの……。

私なんか、毎週土日休んでいるのに、いつも“疲れた”って思うばかりだよ。

げんなりしながらため息をつくと、そんな私をいたわるように、甲斐が言う。


「まあ、別に慌てて動く予定でもないから、明日は好きなだけ寝てればいい。お前が起きる時間に合わせて外出しよう」

「え……でも、朝ご飯の準備とか、洗濯とか、お風呂掃除とか」


普段自分が朝やっている家事のノルマを思わず指折り数える私に、甲斐はしょうがないヤツ、とでも言いたげな笑みを浮かべた。


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