溺愛ペット契約~御曹司の甘いしつけ~


この寒い中ドレス一枚で、しかも変な男に抱きかかえられてるなんて恥さらし以外の何ものでもない。私は足をばたつかせて甲斐に言う。


「あの! いい加減下ろしてください!」

「名前を言ったらな」


なにそれ、結局名乗らなきゃいけないじゃない! 初めて会った時も思ったけど、性格悪い、この人。


「水樹です! 水樹稀華!」

「稀華……な。最初からそうやって素直に言うこと聞いてりゃいいんだよ」


むか。せっかく教えてあげたのに!

内心憤る私を、むかつく男、甲斐はようやく地面に下ろしてくれた。

よしっ。これで逃げられる!


「では、私はこれで。さような――」


くるりと体の向きを変え颯爽と立ち去ろうとしたはずが、手首をつかまれて前に進めなかった。

もう! なんでこここまでしつこいのよ!

文句を言おうと再び甲斐の方を振り返ると、肩の上からばさっと彼のスーツの上着を掛けられた。

ふわん、と香ったスパイシー系の香水が男性的で、不本意ながらドキッとしてしまう。

同棲している理一(りいち)は女子みたいな甘い香りばかり着けているから、こんなにザ・大人の男的な香り嗅いだことない。

……って、なんで甲斐の服を私が着なきゃならないのよ!


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