溺愛ペット契約~御曹司の甘いしつけ~


「ちょっとなんですかこれ!」

「いいから黙って着てろ。見てるこっちが寒い」

「じゃあ見なければいいでしょ!」

「キャンキャンうるせーな……」


迷惑そうに顔をしかめる甲斐だけど、上着を回収する様子はない。

……まあいっか。本音を言えばドレス一枚よりはましだし、甲斐は上着がなくてもシャツとベストを着ているから寒くはなさそうだし。


「じゃあ帰るぞ、犬小屋に」

「い、犬小屋……?」

「冗談だ。俺のマンション」


言いながら彼は通りに向かって手を上げていて、すぐにタクシーがつかまった。

こ、これ、ついてったらいけないパターンだよね?

でも、この人みたいにいかにもお金持をっていそうな太客(ふときゃく)ならアフターも付き合うべき? いやいや、私あの店から厄介払いされたばかりじゃん。

お金を稼ぐ手段がひとつ減っちゃったんだから、こんな変な男に付き合っている場合じゃない。

でも、この男、私を逃がしてくれそうもないし……。


「稀華、早く」


甲斐は私の背中にそっと触れ、タクシーの中へ促す。


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